共有名義の不動産は売却できる?売る方法と手続きの流れを解説
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2023.11.20

共有名義の不動産は、売却できます。売る方法は5つありますが、共有者の状況や考えによって、売却手段が異なります。そこで今回は、不動産の売却に向けて、共有名義とはいったいどのような不動産なのか、単独名義との違いや共有持分権者が有する同意の範囲、具体的な売却方法、必要書類についてわかりやすく解説していきます。
目次
共有名義の不動産は、売却できる
親が所有していた不動産を子供が相続すると相続人たちによって共有状態となり、共有名義の不動産となります。共有名義の不動産を売却するには、共有名義や共有持分権者への理解が必要です。まずは、共有名義の不動産についてご説明します。

共有名義の不動産とは?
共有名義の不動産とは、1つの不動産を複数の人で所有している状態のことです。共有者には、それぞれが自分の持分に対して所有権を主張する権利があります。共有名義の不動産は、相続によって複数の人が不動産を取得する場合や夫婦で購入する場合などによく見られます。共有名義の不動産を売却、または管理を行う際は、共有者全員の同意が必要となります。
単独名義との違い
不動産の所有状況には、単独名義と呼ばれるものもあります。単独名義とは、1つの不動産を1人で所有している状態のことです。単独所有者には、不動産に対する完全な所有権があります。共有名義と単独名義の違いは、端的に言えば所有者の数です。共有名義と単独名義の具体的な違いは、以下のとおりです。
項目 | 共有名義 | 単独名義 |
---|---|---|
所有者 | 複数人 | 1人 |
所有権 | 持分(権利を有している分だけ) | 完全所有 |
売却や管理 | 共有者全員の同意が必要 | 単独で可能 |
相続 | 持分が相続される | 単独で相続される |
メリット |
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|
デメリット |
|
相続税が高額になる可能性がある |
不動産の所有権を有する共有持分権者とは
共有持分権者とは、1つの不動産を複数人で共有する場合、各々の不動産全体の持分割合に応じた権利を持つ人のことをいいます。
たとえば、5,000万円の不動産を、AとBの2人が共同で所有する目的で購入した場合、不動産の名義人はAとBとなります(共有名義)。AとBは、それぞれ2,500万円の持分割合を有しています。共有持分権者には、持分割合に応じた以下の権利があります。
- 使用権
- 収益権
- 処分権
共有名義の不動産を売却する場合、共有持分権者の同意が必要となります。しかし、自分の共有持分だけであれば、共有者の同意なしに売却できます。
そのため、共有名義の不動産を売却する際には、共有持分権者の同意を得るために、すべての共有者全員と話し合う必要があります。また、共有持分権者の同意を得られない場合は、共有持分だけを売却するなどの方法を検討することもできます。
共有持分権者が有する同意の範囲
共有持分権者が有している同意の範囲は、主に次の3つに分けられます。
- 単独で可能:保存・使用
- 過半数の同意が必要:利用・改良
- 全員の同意が必要:処分
単独で可能:保存・使用
保存とは、不動産の現状を維持するための行為です。たとえば、修繕や清掃などが保存行為に該当します。そして、使用とは共有中の不動産に住むことです。保存・使用行為は、共有持分権者の同意なしで単独でできます。
過半数の同意が必要:利用・改良
利用とは、誰かに短期的な収益目的で不動産を貸したり、賃貸借契約を解約したりすることです。そして、改良とは、不動産の機能性を上げるためにリフォームやリノベーションをすることをいいます。利用・改良行為は、共有持分権者の過半数の同意が必要です。
全員の同意が必要:処分
処分とは、不動産を売ったり、借地借家法が適用される賃貸借契約を締結したり、抵当権を設定したりすることをいいます。今回、共有名義の不動産を売却することは、処分に該当します。処分行為は、トラブルを避けるためにも共有持分権者のすべての同意が必要です。
共有名義の不動産を売却する5つの方法
共有名義の不動産の売却には、次の5つの方法が有効です。

方法1:共有者全員の同意を得て売却する
共有名義の不動産を売却する方法として、共有者全員の同意を得て売却する方法は、最も有効な方法の一つです。共有者全員の同意を得ることができれば、不動産全体をそのまま売却することができ、最大の売却益を得ることができます。また、共有者間でトラブルが起きることもありません。
ただし、共有者全員の同意を得ることは、必ずしも容易ではありません。共有者の中に、売却に同意しない人がいる場合、売却が遅れる可能性もあります。
また、共有者全員の同意を得るためには、共有者全員と話し合い、合意形成を図る必要があります。共有者の意見がまとまらない場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談するのも一つの方法です。
方法2:自分の持分に限定して売却する
自分の持分に限定して売却する方法は、方法1と比べて共有持分権者の同意を得る必要がないため、共有者全員の意見をまとめる必要がありません。また、共有持分の売却には、共有者全員の同意を得る場合に比べて、手続きが簡単で費用も安く済みます。
ただし、共有持分の売却額は、不動産全体の売却額に比べて低くなる可能性があります。そのため、自分の持分に限定して売却する方法は、共有者全員の同意を得るのが難しい場合や、共有持分の売却額が安くても問題ない場合に有効な方法といえるでしょう。
方法3:他の共有者に買取を依頼する
自分の持分に限定して売却する場合、他の共有者が買い取ってくれる場合は、共有者全員の同意を得なくても売却できます。ただし、他の共有者が買い取る場合でも、自分の希望する価格で売却できない可能性があります。
そのため、他の共有者に買取を依頼して売却する方法は、共有者全員の同意を得るのが難しい場合や、他の共有者がその不動産を必要としており、買い取ってくれる可能性が高い場合などに有効な方法といえるでしょう。
方法4:土地を持分割合に応じて単独名義にする
土地に限定して不動産を売却する場合、分筆登記によって土地を単独名義にできれば、だれかの同意を得なくても売却できます。分筆とは、1つの土地を2つ以上に分けることをいい、複数の土地を1筆にまとめることを合筆といいます。土地は、分筆すると共有名義から単独名義に変わります。
登記簿上は、1筆ごとに地番が付されており、分筆を行うことで、新しくできた土地には新たな地番が付されます。そして、分筆のための登記は、分筆登記と呼ばれています。しかし、土地を分筆するには、土地家屋調査士に依頼して測量を行い、分筆登記を申請する必要があるため、費用と時間を要する点に注意しましょう。
方法5:リースバックの仕組みを利用する
共有者のうちだれかが不動産に住んでおり、売却に反対している場合は、リースバックの仕組みを有効に利用しましょう。リースバックとは、不動産を売却した上で、不動産に賃貸借契約を結んで継続して使用できる仕組みです。
リースバックを利用すれば、不動産を売却して現金化できるのはもちろん、共有者がそのまま住み続けられます。そして、リースバックの売却価格は、通常の売却方法と変わらないケースが多いため、価格が下がるといった問題も生じません。
しかし、リースバックを利用する場合、売却した不動産と賃貸借契約を結ぶため、毎月家賃を支払う必要があります。リースバック会社には、さまざまな会社があり、契約内容も会社によって異なりますので、契約内容をしっかりと確認して、納得した上で契約するようにしましょう。
共有名義不動産の売却に必要な書類とは?
次に、共有名義の不動産売却で必要となる書類についてご説明します。

共有者全員が準備すべき書類
共有名義の不動産売却に向けて準備すべき書類は、次のとおりです。
身分証明書
身分証明書は、本人確認のために必要な書類となります。
- 運転免許証
- パスポート
- マイナンバーカード
- 住民基本台帳カード
- 健康保険証
印鑑証明書
印鑑証明書は、実印が本人のものであることを証明するために必要となります。市区町村役場で発行してもらい、印鑑登録証の登録印と印影が一致していることを確認してください。
住民票
住民票は、共有者の現住所を確認するために必要となります。最新のものを市区町村役場で発行してもらいましょう。
実印
実印は、売買契約書に署名押印するために必要となります。印鑑登録証に登録された印鑑を準備しましょう。
共有名義の不動産に関する書類
不動産の所有者であることを証明するためには、次の書類が必要となります。
登記識別情報(登記済権利証)
登記識別情報とは、不動産の所有権を証明する情報です。平成17年の不動産登記法改正により、従来の登記済権利証に代わって発行されるようになりました。
登記識別情報は、不動産の所在地や権利の種類、権利者の氏名・住所などの情報が記載された書面(登記識別情報通知)に記載された12桁の英数字の組み合わせです。この12桁の英数字を登記所のコンピュータに入力することで、その不動産の所有権を有する本人であることを確認できます。
登記識別情報は、不動産の売買や抵当権の設定などの登記手続きに必要となります。また、登記識別情報の交付を受けた人は、法務局のコンピュータで自らの不動産情報を閲覧できます。
地積測量図
地積測量図とは、土地の面積を法的に確定した図面のことです。地積測量図には、次の情報が記載されています。
- 土地の地番
- 土地の形状
- 土地の面積
- 土地の境界標の位置
- 地積の求積方法
地積測量図は、土地の権利関係を公示するために重要な役割を果たしています。土地の売買や抵当権の設定などの際には、地積測量図の記載内容を必ず確認しましょう。
境界確認書
境界確認書とは、隣接する土地の境界線について、双方の所有者が合意を交わしたことを記した書面で、境界確認書、境界承認書、筆界承認書などと呼ばれることもあります。通常、境界確認書は承諾した土地の境界に関する図面とセットで作成されることがほとんどであり、この場合、両者を合わせて製本し、契印します。
共有名義の不動産を売却する流れ
共有名義の不動産は、次の流れに沿って売却していきます。

ステップ1:共有者情報を整理する
共有名義の不動産は、共有者全員の同意がなければ売却できないため、名義人全員の氏名や住所、連絡先、共有持分割合、売却の意思確認などを整理します。共有者の詳細は、登記事項証明書で確認できます。
登記事項証明書は、法務局で取得できます。取得方法は、以下のとおりです。
法務局の窓口で取得する
法務局の窓口に行けば、登記事項証明書の交付を申請できます。申請時に、600円の申請手数料の支払いと不動産の所在地や地番などの情報を提示する必要があります。
法務局のホームページから取得する
法務局のホームページから、登記事項証明書の電子交付を申請できます。法務局の窓口で取得する場合と比べて申請手数料が500円と安く、自宅にいながら証明書を郵送で受け取れます。
専門家へ依頼する
司法書士に依頼すれば、登記事項証明書の取得を代行してもらいます。基本的には、法務局のホームページからオンライン申請する方がほとんどですが、司法書士以外にも仲介業務を行う不動産会社が準備してくれることもあるため、気になる場合は事前に専門家へ相談しましょう。
ステップ2:リーダーを決定する
共有名義の不動産を売るには、売却に関する意思決定や手続きを進めるため、共有者全員でリーダーを決定する必要があります。リーダーは、共有者全員の意思をまとめ、売却を効率良く進めるための役割を担います。具体的には、次のような業務を行います。
- 売却方針の決定
- 買主との交渉
- 売買契約の締結
- 売却にかかる費用の負担
リーダーは、共有者全員の信頼を得ている人を選ぶことが重要です。信頼できるリーダーを1人決めることで、共有者間のトラブルを防止できます。
ステップ3:持分割合に応じて費用負担の割合を決定する
共有名義の不動産を売却する場合、売却にかかる費用は、共有者全員で負担する必要があります。売却にかかる費用には、以下のようなものがあります。
- 仲介手数料
- 登記費用
- 測量費用
- 不用品の処分費用
- リフォーム費用
これらの費用は、共有持分割合に応じて負担するのが一般的です。たとえば、共有持分割合がA:50%、B:25%、C:25%の場合、50万円の仲介手数料は、Aが25万円、Bが12.5万円、Cが12.5万円の費用負担となります。
なお、共有者間で費用負担の割合を変更することも可能です。ただし、その場合は共有者全員の同意が必要となります。
ステップ4:最低売却額を決定する
共有名義の不動産を売却する際には、最低売却額を決定することをおすすめします。最低売却額とは、売却価格の下限のことです。最低売却額を決定することで、交渉時の土台を固めることができます。
最低売却額を決定したら、買主を見つけて売買手続きを進めていくことになります。その際、共有者全員の立ち合いが必要となります。立会いが困難な共有者がいる場合、次の方法を検討しましょう。
- 委任状を作成して代理人に委任する
- 司法書士に依頼して、売却手続きを代行してもらう
委任状を作成すれば、立会いが困難な共有者に代わって、他の共有者が売却手続きを進められます。委任状には、委任する権限や範囲を明記する必要があります。他にも、司法書士に相談することで、売却手続きを代行してもらうことも可能です。
委任状には、次の項目を記載する必要があります。
- 委任する者の氏名や住所、印鑑
- 委任を受ける者の氏名や住所、印鑑
- 委任する権限や範囲、期間
委任状は、手書きでも作成できますが、法務局で販売されている委任状用紙を使うと、より確実に作成できます。
ステップ5:確定申告する
不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得が発生します。共有名義の不動産を売却した場合は、共有持分割合に応じて共有者全員が確定申告を行う必要があります。確定申告には、次の書類が必要です。
- 売買契約書のコピー
- 仲介手数料の領収書
- 譲渡所得の内訳書
- 登記事項証明書
- 本人確認書類
- 源泉徴収票
確定申告は、原則として売却した年の翌年の2月16日から3月15日までに、税務署に提出する必要があります。確定申告を忘れた場合、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性があります。しかし、譲渡所得がマイナスの場合は、確定申告の必要はありません。
共有名義の不動産で生じるトラブル
共有名義の不動産には、複数人が不動産の所有権を共有しているため、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。実際に、どのようなトラブルが生じやすいのか、ご説明します。

不動産の利用、または売却で意見が異なる
共有名義の不動産の利用、または売却で意見が異なった場合、トラブルに発展する可能性があります。たとえば、共有者の1人が不動産を売却したいと考えていたが、他の共有者が不動産を利用する予定だった場合、売却が進まない可能性があります。
他にも、共有者の1人が不動産を賃貸したいと考えていたが、他の共有者が不動産を他人に貸すことなく空き家にしてほしいと考えていた場合、賃貸契約を結ぶことができず、不動産が放置される可能性があります。
他の共有者が悪質な買取業者に売ってしまう
共有名義の不動産を売却する場合、共有者全員の同意が必要ですが、自分の共有持分の不動産に関しては、自由に売却できます。そのため、共有者1人が自分の持分を悪質な買取業者へ売却してしまった場合、大きなトラブルに繋がることがあります。
実際に悪質な買取業者は、残りの共有者に対して「早く持分を売らないと、どうなっても知らないからな」や「持分を売らないなら、裁判するぞ」と、脅すことがあります。悪質な買取業者は、相手を騙して安値で不動産を買い取ったり、強制的に権利を奪ったりしてきますので、共有名義の不動産の売却は、慎重に進めることをおすすめします。
他の共有者と連絡がとれない
共有名義の不動産を売却するには、共有者全員と連絡を取り合う必要があります。しかし、共有者の1人と音信不通になると、不動産の売却が難しくなる可能性があります。
一般的に固定資産税や管理費などの支払いは、共有者1人が代表となって費用を立て替えます。後日、費用の立て替えを行った代表者は、他の共有者より持分相当額を受け取ります。つまり、他の共有者の10万円を立て替えた場合は、後日10万円を受け取ることになります。
しかし、他の共有者と音信不通になると立て替えた費用の支払いが滞ってしまいます。これでは、費用の立て替えを行った代表者が払い損となり、簡単には売却できません。
他の共有者が物件に住んでいる
共有名義の不動産に他の共有者が住んでいる場合、その人を追い出すことは簡単ではありません。なぜなら共有者は、共有持分割合に応じて、不動産全体を使用する権利(使用収益権)を有しており、仮に明渡請求を行って裁判を起こしても、適法と判断される可能性が極めて高いからです。
しかし、共有者間の合意に基づいて、共有者が物件から退去してくれるケースもあります。たとえば、共有者全員で共有名義を解消して不動産を売却する場合、共有者は物件から退去する必要があります。
また、法律上、共有者から不当利得を得ている、または共有物が損害を受けている場合、共有者を相手取って、不当利得の返還や損害賠償を請求できます。
他にも、自分の共有持分を売却することで共有名義を解消する方法も有効です。他の共有者が物件に住んでおり、退去させることが難しい場合は、共有持分専門の買取業者や弁護士に相談して、法的手段の利用も検討しましょう。
共有関係が子供や孫まで広がり、複雑になっている
共有名義で相続した不動産を放置していると、共有関係が子供や孫まで広がり、複雑になる可能性があります。たとえば、共有者の1人が亡くなった場合、その共有者の持分は、相続人である子供や孫に相続されます。
そのため、共有者が増えるだけでなく、共有者同士の親族関係も複雑になります。共有関係が複雑になると、共有者間での合意形成が困難な状態となり、トラブルが発生しやすくなります。
共有名義の不動産を放置することは、自分の子供や孫にまで迷惑をかけることに繋がるため、早めに問題の原因を解決しておきましょう。
共有名義の不動産の売却方法や手続きの流れのまとめ
共有名義の不動産の売却方法や基本的な手続きの流れについて解説しました。共有名義の不動産は、1つの不動産に対して複数人が権利を有しているため、売却までの手続きが複雑になりがちです。
しかし、共有名義の不動産の売却に慣れた不動産会社へ相談すれば、家族間でトラブルが生じていても、確実に問題を解決に導いてもらえます。グーホームの一括査定なら共有名義の不動産売却について経験豊富な不動産会社がいますので、まずはご利用・ご相談ください。
