抵当権付きの不動産は売却できる?具体的な手続きと流れ
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2023.12.15
不動産を買っても急な転勤が決まったり、住宅ローンの返済が難しくなれば、抵当権付きの不動産でも売却しなければいけないこともあるでしょう。実際に、抵当権付きの不動産は、売却できるのでしょうか。
今回は、抵当権付きの不動産はどのような方法なら売却できるのか、具体的な手続きの流れや抵当権を抹消する方法についてわかりやすく解説していきます。
目次
不動産に設定されている抵当権の基礎知識
抵当権付きの不動産は売却できるのかについてご紹介する前に、抵当権や担保の基礎知識をご説明します。
抵当権とは?
抵当権とは、「お金を貸した人に、不動産を担保にしてもらう権利」のことです。たとえば、住宅ローンを借りるとき、金融機関は「もし、借りた人が返済できなくなったら、不動産を売って返済に充てよう」という考えで、抵当権を設定します。
抵当権が設定されている不動産は、金融機関が優先的に売却金額を受け取ることができます。そのため、抵当権付きの不動産は、一般の不動産よりも売却価格が下がりやすいという特徴があります。抵当権が実行される基本的なステップは、以下のとおりです。
- ステップ1:お金を貸す人(債権者)が不動産を担保にもらう権利(抵当権)を設定する。
- ステップ2:不動産を所有する人(債務者)は、抵当権を設定された不動産を返済のために差し押さえられることを承諾する。
- ステップ3:債務者が返済できなくなった場合、債権者は抵当権を実行して不動産を売却し、返済に充てられる。
このように抵当権は、お金を貸す人にとって万が一のときに備える重要な権利となっています。
担保とは?
担保とは、債務者が債務を履行できなかった(住宅ローンを返済できなかった)場合に、債権者がその債務の弁済を受けることを確保するために、債務者から提供される財産や権利のことです。担保には、大きく分けて「物的担保」と「人的担保」の2種類があります。
物的担保とは、不動産や車、機械など、物や権利を担保として提供するものです。たとえば、住宅ローンを借りるときには、不動産を抵当権の担保として提供します。もし、住宅ローンの返済が滞った場合、金融機関は抵当権を実行して不動産を売却し、返済に充てることができます。
人的担保とは、第三者が債務者の代わりに債務を履行する担保のことです。たとえば、借金の保証人になってもらうことは、人的担保の一種です。もし、債務者が返済できなくなった場合、保証人は債権者に対して債務を返済する責任を負います。
担保は、債権者のリスクを軽減するための重要な手段です。担保がなければ、債権者は債務者が返済できなくなった場合に、債権回収が困難になる可能性があります。担保の具体例としては、以下のようなものがあります。
- 物的担保:不動産、車、機械、商品、債権、株式、特許権など
- 人的担保:保証人、連帯保証人、保険など
抵当権付きの不動産は売却できる?
結論から言うと、抵当権の付いた物件を売却することは可能です。自由に制限なく売買できますが、基本的には抵当権を抹消してから売却する、もしくは売却と同時に抹消することが一般的です。
なぜなら、買主にとって抵当権付きの不動産は、非常にリスクが大きいからです。抵当権付きの不動産には、買主にとって次のようなリスクがあります。
- 抵当権が実行されて不動産を失う可能性がある
- 売却する際に、一般の不動産よりも売却価格が下がりやすい
抵当権が実行されると、不動産は売られることになり、金融機関が売却金額を優先的に受け取ります。売却金額が住宅ローンの残債を下回る場合、買主は借金を負うことになります。
また、抵当権付きの不動産は、一般の不動産よりも売却価格が下がりやすいため、買主が売るタイミングで損をする可能性があります。そのため、抵当権抹消手続きを行ってから売却するケースがほとんどです。
抵当権付きの不動産を売却する3つの方法
抵当権付きの不動産は、主に次の3つの方法で売却できます。
- 【方法1】自己資金で住宅ローンを完済して売却する
- 【方法2】不動産の売却益で住宅ローンを完済して売却する
- 【方法3】任意売却する
それぞれの方法について、詳しくご説明します。
【方法1】自己資金で住宅ローンを完済して売却する
自己資金に余裕がある場合は、自分の預貯金を使って住宅ローンを完済しましょう。自己資金を使って住宅ローンを完済することで抵当権を抹消できるため、不動産を売却しやすくなります。
もし、抵当権が残っている状態で不動産の住み替えをお考えであれば、引っ越し先の住宅ローンが通りづらくなる可能性があります。自己資金が足りなければ、配偶者や両親に残債の返済について相談し、住宅ローンが問題なく通る体制を整えましょう。
【方法2】不動産の売却益で住宅ローンを完済して売却する
自己資金で住宅ローンを完済できない場合は、不動産の売却益を支払いに充てる方法がおすすめです。たとえば、次のケースなら不動産の売却益でローンを完済できるため、抵当権を抹消できます。
- 不動産の売却益:1000万円
- 残りの住宅ローン:1000万円
次に、不動産の売却益と自己資金を組み合わせたケースをご紹介します。
- 自己資金:500万円
- 不動産の売却益:500万円
- 残りの住宅ローン:1000万円
こちらのケースでは、不動産の売却益だけでは、住宅ローンを完済できないため、自己資金500万円を組み合わせることで抵当権を抹消できる状態となります。
【方法3】任意売却する
自己資金や不動産の売却益を使っても住宅ローンを完済できない場合、任意売却の利用をおすすめします。任意売却とは、住宅ローンの支払いが困難になった場合に、債権者(金融機関)の同意を得て、第三者に不動産を売却する方法です。任意売却は、通常の売買と同じ形式で手続きを進めるため、不動産の市場価格に近い金額で売却できます。具体的には、次の手順で進めていきます。
- ステップ1:不動産会社へ査定を依頼する
- ステップ2:債権者に任意売却の合意を得る
- ステップ3:売買手続きを進める
- ステップ4:買主を見つけて売買契約をする
- ステップ5:決済と不動産の引き渡しを行う
- ステップ6:債務が残れば、無理のない範囲で返済計画を立てる
任意売却の場合、債権者から同意を得ることができなければ手続きを進められません。そのため、住宅ローンの返済がどうしても難しくなってしまった場合の最終手段だと思っておきましょう。
不動産の抵当権抹消手続きの流れ
不動産の住宅ローンを完済したからといって、自動的に抵当権が抹消されるわけではありません。抵当権を抹消するためには、必要書類の準備や手続きが必要です。次に、必要書類や提出先についてご説明します。
必要書類を準備する
不動産の住宅ローンを完済すると、金融機関から下記の書類が届きます。
登記済証または登記識別情報
登記済証とは、登記名義人(所有者)に交付され、登記の完了を証明するものです。登記済証には、以下の情報が記載されています。
- 不動産の所在
- 所有者
- 抵当権の設定状況
2005年3月7日に不動産登記法が改正され、登記済証の発行制度は廃止されました。現在は、登記識別情報が登記済証に代わるものとして発行されています。
登記識別情報は、登記済証と同様の情報が記載された12桁の英数字のパスワードです。登記名義人は、登記識別情報を法務局に提出することで、登記の閲覧や申請を行うことができます。
弁済証書
弁済証書とは、住宅ローンの完済を証明する書類です。弁済証書には、以下の情報が記載されています。
- 融資金額
- 完済日
- 残債額
代理権限証明情報
代理権限証明情報とは、司法書士に抵当権抹消の登記を依頼する場合に必要な書類のことです。代理権限証明情報には、以下の情報が記載されています。
- 本人の住所や氏名
- 委任する司法書士の住所や氏名
- 委任する業務の内容
登記事項証明書
登記事項証明書とは、不動産の登記記録を証明する書類のことです。登記事項証明書には、以下の情報が記載されています。
- 不動産の所在
- 所有者
- 抵当権の設定状況
これらの書類は、住宅ローンの完済後に抵当権抹消手続きで必要な書類です。しっかりと保管しておきましょう。
法務局に準備書類を提出する
不動産の所在地を管理している法務局で抵当権抹消登記申請書類を受け取ります。必要項目に記載し、必要書類と一緒に提出すれば、抵当権の抹消手続きは完了します。その際、登録免許税の支払いや印鑑が必要です。登録免許税は、物件・土地1つにつき1000円となりますので、忘れないように準備しておきましょう。
法務局では、書類の審査が行われ、問題がなければ抵当権の抹消登記が行われます。抵当権の抹消手続きは、窓口でも申請可能ですが郵送でも対応してくれます。どちらか都合の良い方法を選びましょう。
抵当権付きの不動産を相続したら?
相続した不動産に抵当権が付いていた場合、主に次の2つの方法で手続きを進めていきます。
- 不動産の抵当権を抹消する
- 不動産の相続を放棄する
抵当権抹消時の注意点や相続放棄のポイントについてご説明します。
不動産の抵当権を抹消する
抵当権は、不動産の所有者が変わっても、その効力が継承されます。そのため、抵当権付きの不動産を相続した場合は、抵当権の債務も相続されます。抵当権の債務を完済しない限り、抵当権は消滅しません。
不動産の相続後に借金の返済が滞ってしまうと、抵当権を実行される可能性があるため、早めに完済して抹消手続きを行いましょう。
また、被相続人が借金をしていた場合は、その借金も相続の対象となります。被相続人とは、相続財産を遺して亡くなった人のことです。相続財産とは、被相続人が亡くなった時に有していた財産の総称です。財産には、預貯金や債券などの積極財産(プラスの財産)だけでなく、抵当権付きの不動産や家賃の支払い債務などの消極財産(マイナスの財産)も含まれます。
抵当権付きの不動産は消極財産に該当しますが、マイナス財産であっても相続した場合は、相続税の支払いが必要です。法律によって相続税は、相続者全員が返済義務を負うことになっています。そのため、不動産を相続しない相続人も相続税の支払い義務が発生します。その場合は、金融機関へ相談し、不動産の相続者だけが返済義務を負うように変更手続きができます。
不動産の相続を放棄する
相続することで多額の負債を負ってしまう場合は、相続放棄をおすすめします。相続放棄とは、被相続人の財産の一切を取得しないことを宣言する制度のことです。相続放棄するには、被相続人の死亡を知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出する必要があります。
相続放棄をすると、相続放棄申述書の申請が受理された日から相続人としての権利義務を失います。そして、不動産の所有権だけでなく、抵当権の債務も相続されなくなります。一度、相続放棄申請が受理されると、原則として取り消しはできません。
抵当権付きの不動産は売却方法や具体的な手続きのまとめ
今回は、抵当権付きの不動産は売却できるのか、有効な方法や具体的な手続きの仕方について解説しました。不動産に抵当権が付いていても売却できますが、なかなか売れないのが現状です。
住宅ローンを完済し、抵当権を抹消したうえで不動産の売却手続きを行うのが理想ですが、難しいケースもあるでしょう。そういった場合は、不動産会社に売却相談を行いましょう。グーホームの一括査定を利用すれば、オペレーターがご要望をお伺いし、ご状況にぴったりな不動産会社を紹介してくれます。まずは、グーホームの無料相談をご利用ください。