マンション売却時に管理費と修繕積立金は返金される?
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2024.02.02
分譲マンションを所有すると、管理費と修繕積立金の支払いが毎月発生します。修繕積立金は、「積立」という名称になっているため、個人的な定期預金のようなものと捉え、不動産売却時に返金されると勘違いしている方が少なくありません。結論からお伝えすると、管理費と修繕積立金は返金されません。今回は、マンション売却において管理費と修繕積立金はどのように扱われるのか、返金されない理由や滞納していても売却できるのかについてわかりやすく解説していきます。
目次
管理費と修繕積立金は返金されない
冒頭でもお伝えしたように、マンション売却時に管理費や修繕積立金が返金されることはありません。これは、マンション契約時の管理規約に詳細が記載されています。管理規約とは、区分所有法に基づいて作成されたマンションのルールのことです。管理規約には、「管理組合に属する組合員は、納付した管理費等及び使用料について、その返還請求又は分割請求をすることができない。」と明記されています。
管理費や修繕積立金は、マンションの維持・管理に欠かせない費用です。そのため、1度支払ったものについては返還請求できません。
売却時に管理費と修繕積立金が返金されない理由
マンション売却時に管理費と修繕積立金は管理規約に従って返金されないことがわかりました。次に、管理費と修繕積立金の扱われ方や返金されない具体的な理由についてご説明します。
管理組合の財産となっている
マンションは所有者全員で管理組合を立ち上げ、組合が中心となって管理費や修繕積立金をメンバー全員から集めていく仕組みとなっています。そのため、マンションの所有者から集めた管理費と修繕積立金は管理組合の財産として扱われます。
つまり、マンションの所有者が毎月支払っている管理費と修繕積立金は管理組合の財産であり、個人的に扱えるお金ではありません。そのため、マンション売却後に返金されることはないということです。
長期修繕計画に使われている
管理費と修繕積立金は、マンションの管理や修繕のために支払われる費用です。管理費はマンションの所有者全員に対して暮らしやすい空間を提供するため日常的な管理や維持に、修繕積立金は長期的な修繕や改修のために使用されます。たとえば、管理費は次の費用に使われます。
- 管理人設置のための人件費
- 定期清掃費
- 設備点検費
- 警備システムの付帯設備費用
万が一、返金することがあれば「管理人設置のための人件費がない」や「定期清掃のお金が払えない」といったことになりかねないため、返金されることはありません。また、修繕積立金は次のような工事で利用されます。
- 屋根防水工事
- 外壁塗装工事
- 外壁タイル交換工事
- 共有部分の鉄部塗装工事
- 駐車場装置更新工事
- エントランス改修工事
これらの修繕工事はあくまでもほんの一部であり、実際はこれよりも多くの修繕項目があります。このような修繕工事は、長期修繕計画に基づいて修繕積立金の金額が決定されます。長期修繕計画とは、マンションの共有部分の修繕や改修を10年から20年程度の長期的な期間を見据えて作成した計画表のことです。
長期修繕計画はマンションの老朽化を防止し、快適な居住環境を維持するために必要です。また、マンションの定期的な点検や修繕を通じて物件所有者の資産価値を維持するためにも重要な役割を果たします。長期修繕計画には、以下の内容が記載されています。
- 修繕や改修の対象となる部位
- 修繕や改修の実施時期
- 修繕や改修に必要な費用
マンション売却時に長期修繕計画が返金されてしまうと将来実施される修繕工事費用が足りなくなり、長期修繕計画に基づいた修繕工事ができなくなります。そのため、直近で修繕工事が行われていないかったとしても、管理費と同様に不動産売却時に修繕積立金が戻ってくることはありません。
売却時に管理費と修繕積立金は買主と精算できる?
マンションの管理費と修繕積立金は、次月分の支払いを行う前納方式となっています。たとえば、5月11日に次の買主へマンションの引き渡しを行っても5月分の管理費と修繕積立金は前月の4月に支払いを終えています。
しかし、本来なら5月11日がマンションの引き渡し日なら5月11日までは売主が支払うべきですが、5月12日~5月31日までは次の買主が支払うべきでしょう。そのため、買主に対して5月12日~5月31日までの管理費と修繕積立金を計算して請求することがあります。これを管理費と修繕積立金の精算といいます。
管理費と修繕積立金の精算は、法律で定められた権利義務ではありません。実際に精算するかについては不動産仲介会社に相談したうえで買主へ精算交渉するか決めましょう。
管理費と修繕積立金を滞納していても売却できる?
売主が管理費と修繕積立金を滞納していた場合、マンションは売却できるのでしょうか。次に、管理費と修繕積立金の滞納分の請求についてご説明します。
滞納分が買主に請求される
管理費と修繕積立金を滞納している場合、区分所有法という法律に基づいて次の買主に承継される仕組みとなっています。区分所有法の第46条(規約及び集会の決議の効力)には、次のことが記載されています。
規約及び集会の決議の効力
第46条 規約及び集会の決議は、区分所有者の特定承継人に対しても、その効力を生ずる。
2 占有者は、建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う。
本来、民法254条により共有物の他の共有者に対する債権は特定承継人に及ぶと規定されています。特定承継人とは、マンションの買主のことです。そして、民法254条の解釈は第46条によって区分所有における共有関係にも拡張されています。
つまり、管理費と修繕積立金を滞納している場合は、買主(新しく管理組合に入る人)に請求できることになっています。そのため、マンションの買主に滞納分の支払い義務が生じます。
買主に滞納していることを告知する義務がある
管理費と修繕積立金を滞納している場合、宅地建物取引業法(宅建業法)に基づいて売主は買主に対してその事実を告知する義務があります。もし、滞納の事実を告知することなく売却すれば、買主とのトラブルに発展してしまいます。そのようなトラブルを予防するために、重要事項説明書の説明では契約内容についての読み合わせが行われます。
重要事項説明書には、管理費と修繕積立金などの滞納の有無が記載されているため、買主は滞納の事実を把握したうえで売買契約を交わし、滞納分の支払いも行います。しかし、「売主の滞納分の支払いを買主がするのは間違っている」という声が多いのも事実です。そのため、表面上は滞納分について買主が支払いを行ったあとで売主に後日請求するケースもあります。
管理費や修繕積立金の滞納は、マンション売却はもちろん、建物の維持管理や資産価値の低下など、さまざまな問題の原因となります。もし、支払いがしっかりとできているか不明点がある場合は、マンション売却前に管理組合に確認しましょう。もし、買主に事前に伝えたい内容がある場合は、売主が不動産会社を介して告知した方が売却後のトラブルを防止しやすくなります。
大規模修繕が目前!マンション売却のベストなタイミング
次に、大規模修繕が目前に迫っている場合のマンション売却のベストなタイミングについてご説明します。
修繕積立金の増額前
マンションは、大規模修繕が実施される前に売却するのがベストなタイミングです。大規模修繕が実施されると、修繕積立金の増額が検討されます。修繕積立金の増額は、マンションの売却価格を下げる要因となります。そのため、修繕積立金の増額が決まる前に売却することで売却価格を高く維持できます。
他にも、大規模修繕が実施される前に売却した方が値上げによって生じる売主の負担を軽減できます。
総会の可決前
修繕積立金の増額・値上げは、マンション管理組合の総会で可決されることで決定します。実際には次のような流れで総会で修繕積立金の増額・値上げが可決されます。
- 1:大規模修繕工事の実施が近づく。
- 2:修繕積立金の不足が問題視される。
- 3:組合員からの「一時金の徴収」「金融機関からの借り入れ」「積立金の大幅な値上げ」が総会で可決する。
- 4:可決内容が重要事項説明書に記載される。
このように総会で修繕積立金の増額・値上げが決定したら重要事項説明書の記載内容について買主への説明義務が発生します。そのため、マンション売却のベストなタイミングとしては、買主への説明義務が発生しない総会の可決前ということです。
【まとめ】不動産会社と相談しながら精算金を決定しよう
マンション売却をする際は、過去に支払った管理費や修繕積立金を返金してもらうことはできません。しかし、前納した分を日割り計算することで返金の形態をとることは可能です。特に、月の初めにマンションの引き渡しを行う場合は、不動産会社を介して買主と具体的な精算金を決定することをおすすめします。
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