居心地のいい空間は「照明」にこだわっている
2022.01
照明の配置の仕方や明るさのバランスは、実は居心地の良し悪しを大きく左右しています。
なかなか『照明=居心地』と結び付けて考えにくいかもしれませんが、「居心地が良いな」と感じる空間には、さり気なく照明計画が施されていています。人が落ち着くように「狙って」照明が配置されているのですね。
好きなカフェやレストラン、ホテルなどを思い浮かべてみてください。素敵な照明器具が付けられていて、きっと落ち着く明かりが灯っているはず。
照明計画は奥が深くて難しい。ですが基本的なことを取り入れるだけで、同じ空間でも信じられないほど違う表情になります。
今回は、家づくりに役立つ照明の配置方法と色温度についてお伝えしていきます。
目次
照明の配置方法の鉄則
『グレア』という言葉をご存知でしょうか?
「不快な明るさ・まぶしさ」という意味の言葉で、照明の会話をする際にはよく使います。
どんなときにグレアが発生するのかというと、光源が直接目に入るとき。
照明計画では、このグレアが発生しないように配置することが鉄則です。
例えば、ゴロンと横になったとき真上に照明があったら?眩しくて目をそむけたくなりますよね。
ゆっくりしようと思ったのに、これでは興ざめしてしまいます。
天井に照明を付ける場合は、その場所で見上げても照明が視界に入らないように気を付けてあげましょう。
特に気を付ける場所は、リビングと寝室、子ども部屋です。どこでくつろぐのか、眠るのかを設計の段階で決めておくと、照明の配置がスムーズです。
リノベーション協議会の関西支部に在籍していた頃、照明デザイナーのお話を聴く機会がありました。
「私とは違う世界で生きているな」と突出した感性を感じました。色々なお話の中で「今の住宅は明るすぎる」という言葉がとても印象に残っています。沖縄出身の建築家、伊礼智さんの講演会に伺った際にも「天井は光の反射板的に使い、プレーンに」と照明についてお聴きしました。
照明を低い位置に付けて明かりの重心を落とし、天井に反射させ部屋全体を照らす『間接照明』です。部屋の四隅や天井を照らすと部屋が広く見える効果があるとともに、光源が視界に入りにくいためグレアも発生せず一石二鳥。
- 必要なところに必要な明るさが確保されていること。
- 不必要に明るくなっていないこと。
設計する側と、住まい手が暮らしをリアルにイメージして計画する必要があります。
色温度と照明の位置
住宅に使用する明かりは主に三色あります。
- ①電球色:温かみのある暖色の灯り
- ②昼白色:白色の灯り
- ③温白色:暖色と白色の中間の灯り
この3種類の灯りを生活のシーンに合わせて配置します。
リラックスすることが目的である空間には「電球色」集中して作業する空間には「昼白色」が適していて、その照明を目線の近くに配置するのか、頭上に配置するのかによっても、その空間での「居心地の良さ」に差が生まれます。
実は、これは太陽の動きと関係していているのです。
朝と夕の太陽は、低い位置から暖色の光で、昼は白色の光で高い位置から照らします。
室内でも、これと同じように高い位置から白色の光で照らされると人は活動的になり、暖色の光に包まれるとリラックスして心が落ち着くようになります。
体内時計の作用によるもので、光を目でキャッチして脳へ身体へと伝達し、太陽の動きに合わせて私たちは朝昼は活動的に、夜は睡眠に向けて身体が休まるようにと備わっているのです。
日中、真上からの日差しを「まぶしい」と感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
室内でも、天井の照明で部屋の明るさすべてを確保すると同じことが起きてしまいます。
木陰が気持ちいいように、「明るいところ」と「暗いところ」を室内でも作ることを心がけてみてください。
暗めのところには必要に応じてスタンドライトやフロアライトを置いてみましょう。光が点在することで陰影が生まれ奥行のある空間になります。
このように室内に照明を多数置くことを「多灯照明」と言い、ゆっくり映画を観たいときや作業したいときなどのシーンに合わせて使い分けることができ、なおかつお洒落になります。
お住まいが完成した後でもコンセントを準備しておけば、生活がスタートしてからでもお好きな照明を配置して自由に照明デザインができますね。初めから作りこみすぎず、後から足せばOKくらいが丁度いいように思います。
いかがでしたでしょうか。
ほんの少し照明の位置を変えたり、数を調整するだけで全く異なる空間にデザインできる照明計画をぜひお住まいに取り入れてみてください。
これからのお住まいづくりに役立てていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。
設計者やコーディネーターと楽しく計画してみましょう。