沖縄の外人住宅をリノベーション ~外人住宅は沖縄の建築遺産~|沖縄リライフ

沖縄の外人住宅をリノベーション ~外人住宅は沖縄の建築遺産~

2023.07

沖縄の外人住宅をリノベーション ~外人住宅は沖縄の建築遺産~|沖縄リライフ

今回は、築50年を超える外人住宅を『現代に通用する住まい』へとリノベーションをし、その再生モデルとなることを目指した事例を紹介します。

目次

沖縄の外人住宅

1950年代後半から1960年代にかけて、沖縄では米軍のために12,000戸ほどの戸建て住宅が民間の手により供給されました。
それらの住宅は「外人住宅」と呼び親しまれ、皆さんも一度は聞いたことがあると思います。
しかし、建設から半世紀以上が経過し、一部はショップなどとして活用されているものの、いま解体や建替えが急速に進んでいます。

外人住宅はアメリカ本国の一般市民の『住生活様式』を基本にしており、当時の沖縄はもちろん、日本本土の一般的な住宅と比較しても、構造および床面積、そして間取りや設備においても先進的な住まいだったと想像できます。
一方で勾配が小さいフラットな屋根と、地面からの段差が低い床スラブは、高温多湿の沖縄に決して適しているとは言えない構造でもありました。

そして建築後、半世紀を過ぎた電気や水まわり設備は完全に時代遅れになっています。
「いっそ解体してしまおう…」これから紹介する住宅も、そう考えても仕方ない状況でした。

Before:リノベーション前の外観。鬱蒼とした植栽が建物を覆っている。
Beforeリノベーション前の外観。鬱蒼とした植栽が建物を覆っている。
After:リノベーション後の外観。花ブロックでヒンプンを、アプローチを設けた。
Afterリノベーション後の外観。花ブロックでヒンプンを、アプローチを設けた。
Before:リノベーション前の図面
Beforeリノベーション前の図面
After:リノベーション後の図面
Afterリノベーション後の図面

築100年まで通用する住宅

今回のリノベーションでは、さらに50年!
すなわち『築100年まで通用する住宅』を目指しました。

建物は欠損した躯体コンクリートを補修し、特殊な繊維シートでコーティングしました。 また、漏電の心配がある古い電気配線、給排水とガスの配管も全て刷新しました。
その一方で、間取りに関しては『現代にも通用する』としてほとんど改変せず、内装もシンプルに仕上げています。

欠損した躯体コンクリートを補修し、特殊な繊維シートでコーティングした天井。
欠損した躯体コンクリートを補修し、特殊な繊維シートでコーティングした天井。
ダイニングの既存ペンダントライトはLED電球対応ができるように改造して再利用。
ダイニングの既存ペンダントライトはLED電球対応ができるように改造して再利用。
造作キッチンには、KOHLERのホーロー製シンクやヨーロピアンアンティークデザインの水栓を採用した。
造作キッチンには、KOHLERのホーロー製シンクやヨーロピアンアンティークデザインの水栓を採用した。

リノベーションという選択肢

これまで、沖縄の外人住宅が『建築遺産』として公に高い評価を受けてきたとは言えません。
しかし今、沖縄に残る『貴重な近代建築』として正当な評価をすべきではないでしょうか。

この事例を通して、外人住宅が安易に解体されていく状況に警鐘を鳴らすとともに、外人住宅の価値について再認識するきっかけになれば幸いです。
皆さんの身近にある外人住宅。「解体してしまおう」と決断してしまう前に、リノベーションという選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。

民泊や撮影用のハウススタジオとしても活用できるように家具を配置。
民泊や撮影用のハウススタジオとしても活用できるように家具を配置。
当時を再現するため、天井にはあえて照明をつけていない。ベッドサイドの照明は入口のスイッチで調光可能に。
当時を再現するため、天井にはあえて照明をつけていない。ベッドサイドの照明は入口のスイッチで調光可能に。
浴室の床はイタリアの古建築から再生利用。アンティーク家具を加工し、ボウルを載せて造作した洗面台。
浴室の床はイタリアの古建築から再生利用。アンティーク家具を加工し、ボウルを載せて造作した洗面台。
建物内は浴槽を設けないシャワールームのみとし、屋外ジャグジーを設置。周辺の木々が目隠しに。
建物内は浴槽を設けないシャワールームのみとし、屋外ジャグジーを設置。周辺の木々が目隠しに。

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この記事を書いた人

森岡 瑞穂(もりおか みずほ)

森岡 瑞穂(もりおか みずほ)

自身の希望で大阪本社より沖縄事務所に赴任し、同社運営のホテルスタッフも兼務。リノベーションした住宅で暮らしています。

株式会社アートアンドクラフト 沖縄事務所

株式会社アートアンドクラフト 沖縄事務所 リノベーション協議会

自分らしい住まいと新しい空間づくりの提案。1994年設立。日本におけるリノベーションの黎明期から活動し、住まいやオフィスを『リノベーション』で魅力的に再生することを得意としています。

不動産のプロであるコーディネーターと建築士の資格をもった設計者が、物件探しから設計・施工、引き渡しまでトータルにサポート。ビルやアパートの再生コンサルティングも承ります。

沖縄事務所は老朽化したホテルを全面的に再生し自ら運営もするSPICE MOTEL内にあります。

※株式会社アートアンドクラフト 沖縄事務所はリノベーション協議会の会員です。