床と天井に「懐」をつくる理由
2024.07
![床と天井に「懐」をつくる理由|沖縄リライフ](/fudousan/re-life/202407/img/main.webp)
目次
「懐」ってなに?
懐(ふところ)とは、主に給排水管や電気配線を通す目的で壁や床・天井と、躯体との間に設ける空きスペースのことです。躯体と内壁との間に空気層があるイメージですね。
懐は室内の遮音性・断熱性を高めるためにも一役買っていて、住宅の改修施工を行う上で重要な役割を担っています。
住宅の床から天井までの高さは一般的に240~260cm程度。
リノベーションでスケルトン(躯体だけの状態に解体すること)にすると、土間から上階の床スラブの下端までは300cm程度あることが多く、これだけの空間があれば十分に懐を設けることができるのですが、中には土間から上階スラブ下端まで250cm、懐を設けると室内の天井高が230cm程度になることも。
中古物件を購入してリノベーションをする際には、天井や床の懐の寸法は確認しておかなければならない項目のひとつです。
![Before 解体前](/fudousan/re-life/202407/img/sub01.webp)
![After 解体後](/fudousan/re-life/202407/img/sub02.webp)
どうやって確認するか
『建築基準法で定められている天井高は210cm以上』なので、230cmが低すぎて困るかというとそんなことはありません。
中古マンションを購入し、リノベーションしたわが家の天井高はあえて235cmです。
制約があることを知った上で物件を購入するのであれば問題はありませんが、「広々とした高い天井が良い」という希望を持っている方ならがっかりしてしまうことでしょう。
現在リノベーション施工中の那覇市のマンションは、天井・床・壁も直接躯体に仕上げ材(クロスなど)が施工されている物件で、天井高は257cmでした。
最低限必要な寸法で懐を設けて235cmの天井高で設定することができましたが、これは物件の購入前にご相談をいただき、我々も内覧をしてこれらを含む問題点を事前に施主に伝えられていたことでスムーズに進んだのだと思います。
中古物件を内覧する際、ご自身だけで判断するのは難しい点もあるかと思いますので、不動産会社の方にできるだけ細かく確認し、可能であれば平面図ではなく断面図や矩計図(かなばかりず)で天井や床下にどれだけ空間があるかまで確認してもらいましょう。
既に施工相談をしている会社があれば、建築士やリノベーションコーディネーターに内覧を依頼することができればとても安心。
床や天井をトントンと叩いた音である程度の予測は立てられますし、図面の確認も容易に行えることに加え、建物の問題点と施工上の注意点なども同時に確認できます。
懐を作らないとどうなる?
冒頭でもお伝えしたとおり「懐」を作る主な目的は給排水管や電気配線を収めるためです。
キッチンやお風呂などの水回りに必要な給排水管やガス管などは床下を通しますので床の懐は必須ですが、天井や壁は絶対に懐がなければならないというわけではありません。
天井や壁の躯体をそのまま仕上げとする「躯体現し」であれば電気配線や換気扇のダクトは露出で施工することが可能ではあります。インダストリアル(工業系)と言われるインテリアがお好きな方には抵抗のないスタイルかもしれないですね。
懐を設けない分、天井高も高く設定できますしお部屋が広く感じるメリットがある反面、上階の生活音が響きやすく、下階のドアの開け閉めなどの音も上階に伝わりやすいというデメリットもあります。
壁に懐を設けない場合は「音」以外にも外壁の熱の影響を受けやすくなり、夏は暑くて冬は寒い住環境になるという問題点もあります。マンションによっては外断熱(外壁に断熱施工が行われていること)が施されている建物がありますので、物件の状態と環境・メリットとデメリットを十分に理解した上で施工を決断していただきたいと思います。
![床下懐](/fudousan/re-life/202407/img/sub03.webp)
![天井懐](/fudousan/re-life/202407/img/sub04.webp)
![壁懐](/fudousan/re-life/202407/img/sub05.webp)
まとめ
今回は「懐」の役割や必要性をお話させていただきました。
給排水管や電気配線を収めるためだけの空間ではなく、室内の遮音性や断熱性を高めるためにも重要な要素だということがお伝えできていたら嬉しいです。
リノベーションをしようと考えたとき、間取りや内装や立地に意識が向きがちですが、過ごしやすい住空間を作るためには建物の状態や情報をしっかりと把握し理解することが大切です。
理想のリノベーションを叶えるために必要な情報や知識を収集しながら、信頼できる専門家を見つけておくことも近道のひとつ。
中古物件を探している方は、物件を探すことと平行して「施工を依頼したい」と思える会社を数社絞っておくと良いでしょう。なかなか骨の折れる作業ですが、いざというときに相談できる相手がいるのは心強いです。
ご参考にしていただければ幸いです。