築28年アパートに付加価値プラスのリノベーション
2022.05
目次
倉庫化してしまったスペース
自己所有しているアパートの一室で、母は長年にわたり小さな美容室を営んでいた。しかし、3年程前に父の急逝とともに、すっかり意欲を失った母はパッタリと美容室をやめてしまった。
美容室はそのまま放置され、時がとまってしまったかのようにホコリをかぶり、いらなくなった荷物が溜まっていき、あれよあれよと1年も経たないうちに、カビ臭い暗い倉庫と化してしまったのだ。
建物には不思議と人の感情を反映してしまうようなところがある。使われなくなった部屋は日毎に生気を失い、どんより暗く、心無しか劣化も早いように感じる。 町中に時折みかける、家主のいない廃墟のように。
空室の新しい活用を
アパート経営において、一番やってはいけないのは無駄な空室をつくること。
倉庫化したままでは、収益はあがらず室内の劣化も進み、さらには暗い雰囲気がアパート全体に影響を及ぼしかねない。
今回、かつては美容室にくる地元のお客さんの笑顔と笑い声で満たされていた部屋に、新しい付加価値をつけたリノベーションをしたいと思いついた。
『チャレンジできる空間』のシェア
「カフェをオープンしたい」、「ワークショップをしたい」、「サークルや勉強会をしたい」。
そんな「チャレンジのはじめの1歩をどこかで気軽に始めたい」という前向きな一歩をお手伝いできる、心がわくわくするようなレンタルスペースをつくりたい。
私のリノベーションのコンセプトとイメージはその想いひとつだった。
最近はシェアリングエコノミーが浸透しつつあり、空間のシェアも身近になりつつある。賃貸業としても住居向け賃貸だけではなく、レンタルスペースとしてセミナースペースや会議室、サロン、飲食店をシェアすることも増えている。
収益も効率的に運用を行えば、住居用の賃貸収入よりも高収入が期待できる分野だ。アパートリノベで大事なのは『かけたお金をしっかりと回収できるか』という点である。
空間づくり
天井板をとる
まだ壊れてもいない天井板を取っ払うのには非常に勇気がいるけれど、天井をコンクリート打ちっぱなしのむき出しにするだけで、雰囲気は一気に小洒落て見える。
注意が必要なのは、音の反響が出て上の階に響きやすくなるというデメリットもある。
アイランド型キッチンをど真ん中に
「食」は人をわくわくさせてくれる。皆でわいわい食事をつくったり、もてなしたりキッチンを囲んで何かできる空間にしたいと、ナチュラルなオーダーメイドのキッチンにした。
キッチンを真ん中に配置することでスペースが埋まってしまうけれど、キッチンの存在感がこのスペースの個性にもなっている。
大衆的な古いトイレをセンスよく
大衆的な古さが最も拭えなかったのはトイレと洗面所、お風呂場の水回りである。
浴室はレンタルスペースでは使用しないので、枠を撤去して広い洗面室につくりかえ収納棚を作成。床はタイルだったものを木の床材を貼り直してもらうことで統一感をもたせ、洗面台も木で質感を統一。
トイレの壁の1面にはアクセントとなる色タイルを張って雰囲気を演出。
ベランダをウッドデッキで開放的に
ベランダの空間にはウッドデッキを長めに設置して、お部屋から続く空間として開放的に利用できるように工夫した。
老朽化の目立ったアパートを再生
沖縄のまちを歩きながら古いアパート眺めていると、ひと工夫のアイデアでオシャレに生まれ変わりそうな物件がたくさんある。
沖縄のRCアパートにはそんな魅力と可能性が隠れていると私は思っている。
建て替える前に、良くみてほしい。
コストを抑えるべく「前にならえの修繕だけ」に留まりがちな古アパートのリフォームやリノベーションも、視点を変えたアイデアで新たな付加価値をプラスして、資産活用にワクワクを加えてはどうだろうか。
一度、勇気をだしてリノベーションのプロたちにアドバイスを求めてみてもよいのでは?